フランスのシバムネーハウス〈芝棟〉

2011.11.18

「棟」という一語が建物を造る上でいかに大切かは、「上棟式」とか「棟梁」とかの用語で分かる。日本では古来、屋根のてっぺんに棟木を上げることをもって建物の完成とした。床を張ったり、屋根を葺いたり、壁を塗ったりなんてどうでもよくて、とにかく棟を上げるところまでこぎつければ、出来たも同然。その上げられた棟の梁のように重要な人物のことを「棟梁」と称した。日本の建築界では、かように大事なその棟に芝草を植える習慣が大昔からある。

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茅葺き屋根の棟に、野芝、イチハツ、イワヒバ、ユリ、ニラ、などなどを植えて飾りとする。五月の節句の頃、茅葺きの屋根のてっぺんで、青空を背にイチハツ(腰性のアヤメ)が横一列に紫色の花を咲かせ、その脇をコイノボリが泳ぐ様はすばらしい。マサカ屋根の上でアヤメの花が、と疑う人は水戸の黄門様の別荘の西山荘に出かけてほしい。今でこそ東北地方を中心に百棟あるかないかだが、戦前までは全国各地の茅葺き民家に広く根づいていた伝統の造りなのである。茅葺きのてっぺんに花を咲かせるような伝統は日本だけにしかない、と長らく思ってきた。ところが、フランスにもあることが分かった。で、一咋年、昨年と二度探訪した。自宅の屋根にタンポポを植え(タンポポーハウス)、知人の屋根でニラを咲かせ(ニラ・ハウス)、時には松(一本松ハウス)や椿(椿城)さえ植えてきた私としては、なぜかユーラシア大陸の両端にのみ息づく芝棟に心を寄せないわけにはいかない。





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