マンションのホームパーティーに招かれて装飾過剰な女性的トイレの前で立ち往生、という別の建築家の証言もある。こちらはもっと過激である。洋便器がひとつあるだけなのだが、それを中心にあらゆる織物編物が集結していた。「かわいい」スリッパで「かわいい」タイルの上を一歩あゆむや「かわいい」マットがあって、便座のカバーには色糸細工の技巧が総集されて、ほとんど便器が見えぬほどであった。これはもはや便所でなくて女の牙城であり、女性文化の作品展示室であった。
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水洗式の男女両用便器は、機能性重視と空間節約をめざした公団住宅から一般化した。ホウロウとタイルでおおわれた白い小空間がもともと発信していた意味は「清潔」と「衛生」であって、性的意味をできるだけ排除したのではなかったか。ところがその小空間がせっせと布と色彩でおおわれて女性の趣味に占有されている、とこの男性は本気で怒っている。